ザワッ…ザワワッ…。



……あれからどのくらい経ったのだろうか?

意識がもうろうとする中、瑞希の耳にかすかに声が聞こえ始める。


「おいっ、準備は出来たかぁ?」

「あぁ、アレならちゃんと持ってきたぜ!!」

「あと何人来んだよ?おれぁコイツのケツとフトモモ見てるだけで勃っちまったぜ!!」

「ギャハハハ、お前もかぁ!?w」

「それにしてもイイ乳してやがるぜぇ〜っ!!久々の上物じゃねぇかぁ!?」

「あの人の言う通り、しばらくセンズリしてねーんだ!!
 今日はその分タップリ楽しませてもらおうぜ!!w」



瑞希は男達の話し声によって、少しずつ意識を取り戻し始めた。

瑞希「…っ…んぅ……ここ………どこ?…」

「おっ、今日の主役がお目覚めだぜぇっ!!w」

瑞希「……はっ!?…あ…あんた達……だ……だれ!?」



瑞希は完全に目を覚まし、辺りを見回すと、そこには床や壁がコンクリートで出来た空間が広がっており、

その大きさは学校などの体育館に匹敵するほど広く、声などの反響音から地下室であることが伺える。

そして目の前には見ず知らずの男達が群がり、瑞希の周りを取り囲んでいたのだ。

その数はざっと数えても50人以上はおり、いまだに増え続けている。

そしてその顔ぶれはというと、ほとんどが不良やチーマーなど、街のゴロツキ達で構成されており、

スグにでも犯罪を起こしそうな、屈強で危険な男達ばかり集められていた。


「へへっ女子大生かぁたまんねーなぁ」

「お〜ぅ!!早く始めようぜぇ!?」


瑞希「くっ!!…ちょっと……なんなのこれ!!…は…外して!!」



瑞希は事態の大きさに気付き、抵抗し逃げようとするも、腕をしっかり縛られた上、

ロープを天井にあるフックに引っ掛けられ、ほとんど身動きが取れないでいた。


ガチャッ!!


男達が全員集まった後、遅れて、一際目立つ大柄な男が部屋に入ってきた。

その男はどうやらリーダー格らしく、明らかに他の男達と雰囲気が違った。

大柄な男「ワリーなぁ少し準備に手間取ってよぉっ…。
     オマエらちょっとこの女と話させてくれ」


男がそう言うと、大騒ぎしていた他の男達はしばらく黙った。

大柄の男「へへっ…懐かしいじゃねぇか?それに、中々いい女に育ってやがるぜ…」

男はチンピラ達を掻き分けながら、一歩一歩瑞希に近づいてくる。

しかし、瑞希はこの男の言っている意味が分からなかった。


大柄な男「よぅ、高瀬ぇ!!マジに久しぶりだなぁ!?会いたかったぜぇ!!」

瑞希「えっ!?…だ……だれ?」



その言葉に瑞希は戸惑った。

普段から彼らの様な男達との付き合いなど全く無い上、

この様な仕打ちをされる覚えも全く無かったからだ。

大柄な男「テ…テメェ……もしかして覚えてねぇのかぁ!?
     てっきり、オレがいつシャバに戻ってくんのか、
     ビクビクしながら暮らしてんのかと思ってたのによぉーっ!?
     オレの事ぁとっくに忘れてのうのうと学生生活を楽しんでいやがったとはなぁ!?
     こっちぁオメェの事を一日たりとも忘れたこたぁねぇぜ!!高瀬ぇ!!!」

瑞希「…!!


“汚田島”



その時、突如瑞希の頭に浮かんだ恐怖の名前。

目の前にいる男の発した言葉により、それは強制的に記憶の中から引きずり出される。

心の奥底に封じ込めたはずだった名前……忘れられない忌まわしい記憶……。


瑞希「…そっ!!そんな…まさか……あ…あの……お…汚田島……君…!?…」


一瞬にして瑞希の顔から血の気が引いた。

汚田島「やっと思い出したかよ。そうだ!!汚田島だっ!!
    お前のせいでムショに行くハメになった汚田島凌(おだじまりょう)だぁ!!」


瑞希「…そんなっ!!…わ、私はただ……あの時クラスで…起こってた……事を……」


汚田島「っせーよ!!オメーが警察のクソ共によけーな事、言ってなきゃあ
    子芝のヤツぁ、自殺って事になってたんだよ!!
    あの時ぁ同学年の生徒全員、俺達のグループにビビッて
    誰もあの事に触れなかったのによぉぉ!!!?
    それをテメーだけが正義面して全部チクりやがったんだっ!!!
    ど〜考えても原因はテメェだろーがぁっ!!あぁん!?
    絶対に許せねぇよなぁ〜!?」


瑞希「おっ、汚田島君!!…お願いっ!!許してぇっ!!!悪気はなかったのっ!!
   まさか…刑務所に行く事になるなんて!!そんなっ…私!!」


汚田島にその怒りの理由を聞かされた途端、瑞希の態度が豹変する。

だが、当時のこの男を知っている物なら誰でもこうなっていただろう。


そう、それは6年前の出来事だった…。


当時、瑞希の通う中学校では酷いいじめが往行しており、

そのため登校拒否になってしまう者も多く、中には自殺するものまでいた。

しかし、その中でも汚田島達のグループは別格で、

その悪逆非道ぶりは他校の生徒にまで知れ渡る程であった。

そしてその汚田島達がターゲットにしていたのが、

瑞希と同じクラスメイトだった子芝という男子で、

休憩時間や放課後などに呼び出し、別のクラスである彼をなぜか、いつもいじめていたのだ。


そんな中、瑞希は自分のクラスメイトの一人が、

なぜいつもボロボロになって教室に戻ってくるのかを、日頃から不審に思っていた。

しかし、たびたび目にするその姿を、他の生徒も見ているはずなのだが、

皆、見て見ぬ振りを貫き通しており、思い切って調べてみると、

どうやらこの子芝という男子生徒は小学生の頃、汚田島達の常習的な万引きを

教師に言いつけたため、その事で相当な恨みを買っていたらしい。

そのため、中学に入りクラスが変わった今でも継続していじめられている事を突き止める。

そして瑞希は、この子芝という生徒に何度か教師達に相談する事を提案したが、

いつもほっといてくれと断られていたのだ。

だが、瑞希が説得を諦めかけていたある日、その事件は起こった。


その日、汚田島達は自分達で考えた“飛び降り自殺ごっこ”という遊びを子芝にさせていたのだ。

その内容はかなり危険なもので、子芝を学校の屋上のフェンスの外側に出し

端から端まで歩かせ度胸試しさせる内容だった。

しかし子芝は割と運動神経があったせいか、それをなんとかゴールする事に成功した。

そこで汚田島達は2週目としてその位置からスタート地点まで向かうよう指示すが、

今回は先程とは少し内容が違った。

調子に乗った汚田島は、自分達を“敵”と称し、その攻撃として内側から子芝に蹴りを入れて来たのだ。

とはいえ、フェンスがあるので揺れはするが、難易度自体は一週目とさほど変わらなかった。

だがここで、その事件は起こった。

汚田島はあまり応えていない子芝にイラつき、飛び蹴りを放ったのだ。

その時の汚田島にしてみれば、他愛の無いほんの悪ふざけだったのかもしれない。

しかし、その時当たった場所が運悪く、なんと偶然にもフェンスが壊れかかった部分で、

そのため、汚田島の足はフェンスを貫通してしまい、それが体に直撃した子芝は屋上から蹴り落とされ、

そのまま転落死しさせられてしまったのだ。


そしてその時、一人それを屋上に繋がるドアの影から見ていた者がいた。

そう、それが瑞希だったのだ。

正義感の強かった瑞希は、自分のクラスメイトがいじめられている事に耐え切れず、

汚田島達に直接掛け合って、話し合いをしようとやって来た、まさにその時の出来事だった。


その後、逮捕された汚田島は鑑別所に送られた後、裁判を受けた結果、

構成する見込みが極めて低いとされた上、さらに院内でも事件を起こした為、

特別少年院を経た後、少年刑務所という厳しい施設に送られてしまい、

十代の後半を合計6年もの刑期により、堀の中で過ごす事になったのだ。

そして、その汚田島達が刑務所に送られてしまう原因に、瑞希の証言は欠かせない物であった…。


こうして瑞希に怨みを抱いたまま、半年前出所した汚田島は、

先に出所していた他のメンバーと合流し、瑞希の居場所を突き止めると、

今日この日の為、半年掛けて計画を練り、着々と準備していのだ。


『自分達を刑務所に追いやった高瀬瑞希に復讐をする』その為だけに…。


汚田島「この6年間マジにキツかったぜぇ、瑞希ぃ!?
    オレぁ、ムショ送りにされたあの日から、オメーに復讐する事しか考えてなかったんだぜぇっ!?
    もしかして、このオレが更生してマジメに社会に貢献してるとでも思ってたのかぁ!?あぁん!?」


瑞希「こっ…こんな事して何になるの?…また同じことの繰り返しじゃない!?」

汚田島「ギャハハハッ!!おいおい、まさかこの後ココを出て、
    この事をサツにでもタレ込もーってのかぁ!?
    バ〜〜〜〜〜カ!!逃がすわけねえだろーがぁっ!!!!!
    オレぁムショを出て半年間、今日のこの日のためだけに動いて来たんだぜぇー!?
    そんなヘマやらかすと思ってんのかぁっ!?
    せっかくシャバに戻れたんだっ!!あんなトコぜってぇ戻ってたまっかよっ!!」


瑞希「そっ!!…そんなっ!!」

    
 

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