極悪!!チーマー窃盗団



 その日、瑞希は幼なじみである和樹の、同人サークルの手伝いをするため、

朝からイベント会場に同行していた。


今回で何回目だろうか?

最初の頃はこの空間に全く馴染めず、毎回苦労の連続だったが、

今となっては、サークル“ブラザー2”の売り子として、周りからも認知されるようになり、

そこで知り合った仲間達と交流を深めることで、

瑞希は、あらためて自分のいるべき場所は、ここなんだと気付かされる。

そして今日もまた、いつもの顔なじみのメンバーたちと共に、充実した時間を過ごす事が出来た。


そんな中、帰り道にみんなと分かれた後、瑞希もそのまま自宅へ帰ろうとしたのだが、

なぜかいつもと違い、神妙な面持ちの和樹に突然引き止められ、

そのせいもあってか、今日は随分と帰宅する時間が遅くなっていたのだ。




和樹の家で用事を済ませた瑞希は、

自宅があるマンションに到着すると、いつもの様にエレベーターに乗り部屋へ向う…。


と、その時だった。

瑞希は廊下で、普段と違うある事に気付く。

なぜか誰も居ないはずの自分の部屋の窓から、光が漏れていたのだ。


瑞希「…電気……消し忘れたのかしら?…けど…朝は点けてないわよね…?」

瑞希は不思議に思いながらも、とりあえず家に入る事にした。


ガチャッ


瑞希はいつもの様に鍵を開け、そのまま扉を開くが、そこに広がる部屋の光景は普段と異なっていた。


瑞希「えっ!?」


男1「…あぁん?」


見知らぬ男がこちらを振り返り、瑞希と目が合う。


男2「ちっ、帰ってきやがったか…」


続けて、別にいた二人の男達も瑞希の方を向く。


男3「学生かぁ?どうりで金目のモンがあんまねーわけだ…」


なんと、瑞希の普段暮らしている慣れ親しんだ部屋に、見ず知らずの男が三人も進入していたのだ。

しかも、戸棚や物置など全てを物色され、部屋中の物が散乱しており、

彼らは瑞希と鉢合わせになった事に対しても、動揺する素振りなど全く見せず、

まるで、自分達の家の様に堂々としていた。


瑞希「……だ…だれ!?」


瑞希はあまりの出来事に、困惑しながら男達に問う。


男1「へぇ…女子大生かぁ?中々いいオンナじゃねーか」


男2「やっぱオレ達、ツイてるよなぁw」


男3「あぁ、ココに入って正解だったぜ!!」



だが男達は、瑞希の言葉など無視し、仲間同士で話を続ける。

その時、瑞希は最近よく見かけるニュースを、急に思い出した。

どうもこの付近で、女性宅ばかりを狙った連続窃盗グループが出没し、犯行を繰り返しているらしいのだ。

しかも、その犯人達の手口は卑劣で、窃盗ついでに女性を暴行した上、

被害者達を全裸のままロープで縛って拉致し、公園やトイレなどの公共施設や路上に放置するなど、

その犯行内容は、悪質極まりない物ばかりだった。

瑞希は部屋を見回すと、実際に酷く荒らされており、それは確信に変わる。

間違いない、犯人はこの男達だ!!


瑞希「うっ!?」


身の危険を感じた瑞希は、すぐに部屋を出ようとしたが、男の内の一人が素早く後ろに回り込み、

手馴れた手つきで、何かの薬品が染み込んだ布を、瑞希の鼻と口に覆い被せ、

瑞希は、ほとんど抵抗する事も出来ず意識を失い、そのまま床に倒れこんだ…。





 数時間前
…。


和樹「瑞希……今から俺の家に一緒に来てほしいんだけど…いいか?」


瑞希「えっ?…別にいいけど…?」

瑞希は他のメンバーと別れ、解散した後、

一人、和樹のマンションに同行する事になった。

和樹の自宅であるこの場所は、普段からみんながよく集まる場所で、

瑞希自身もよく来るのだが、今日はいつもと違う雰囲気だった。


瑞希「今日はどうしたのよ?…和樹?」


和樹「ちょっと、そこで待っててくれ…」


和樹はそう言うと、瑞希を部屋に待たせ、自身は奥の部屋に何かを取りに行った。

しばらくすると、和樹は綺麗にラッピングしてある小さ目の箱を持って来る。


瑞希「…これ…は?」


和樹「瑞希…これ、受け取ってくれないか?」


そういうと、和樹は瑞希にそれを手渡した。


瑞希「えっ?」


和樹「これまで色々つき合わせて来たのに、忙しくて何の礼もできなかっよな?
   …いつもありがとう…瑞希」



瑞希「うそ!!……和樹が…私に!?」


和樹「俺…シャレた店とか苦手で、入ったこと無いから…。
   みんなについて来てもらって選んだんだ…」



瑞希「あ、開けてもいい?」


和樹「ああ」


瑞希は箱に架けてあるリボンをほどき、ふたを開けると、

そこにはシルバーのネックレスが入っていた。

そのネックレスは、高級な有名ブランドの物では無かったが、

瑞希の年齢や見た目、ファッションなどに合うよう、しっかり選ばれた物だった。


瑞希「…綺麗……あ……ありがとう…和樹…」


瑞希は普段、おせっかい焼きの幼なじみとして接しているためか、

こういう場面は初めてであり、照れながら礼を言う。


瑞希「…か、和樹…これ着けてみてもいい?」


和樹「ああ、俺が着けるよ」


和樹はそう言うと、瑞希を鏡の前に案内する。


和樹「じゃあ…」


瑞希「うん」



和樹の手が瑞希の首筋にそっと触れる。

瑞希は何故か、いつも会っているはずの幼なじである和樹に対し、少し緊張した…。



そして、新品のネックレスを身に付けた瑞希は、鏡の中の和樹に話しかける。


瑞希「ど…どうかな?……私…」


和樹「ああ…瑞希に良く似合ってるよ…」


想像もしてなかった、和樹からの突然のプレゼントと、

自分の事を大切に思ってくれているという、温かいメッセージに、

瑞希は頬を赤らめ、恥ずかしそうに和樹の方を見る。


瑞希「こ…これ……大事にするね…和樹…」



いつもならここで冗談を言い合い、ふざけ会う二人だが今日は少し違った。

後ろに立っていた和樹は、そのまま瑞希の肩に両手を回す。

瑞希もそれを受け入れ、二人はゆっくりと顔を近づけると、

お互い抱きしめあい、何度もキスを交わしていった…。

            ・
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            ・

瑞希「じゃあまたね…漫画ばっか描いてないで、
   たまには、自分の体の事も気遣ってあげてよね?」


和樹「ああ、そーするよ。しばらくはイベントも無いしな」


瑞希「もうっ、和樹ったら。
   あっ…それから、これ…ほんとに、ありがとね。
   嬉しかったよ…和樹からプレゼントなんて…。」



瑞希は照れ臭そうにそう言うと、そのまま和樹のマンションを後にした...。